奈良県の地価の特徴(平成26年地価公示による)

奈良の地価

イ.奈良県の住宅地
(イ)県全体の地価動向と要因
 平均変動率は△0.5%であり、6年連続の下落(H21△2.1%、→H22△4.5%、→H23△2.9%、→H24△2.0%、→H25△1.1%、→H26△0.5%)となったが、昨年より下落率は縮小しほぼ横這いに近づいている。大阪・京都への利便性に優る県北部エリアの回復は顕著であり、奈良市、生駒市の平均変動率がプラスに転じた他、中和エリアの中核都市である香芝市もプラスとなった。一方、大阪都心部等への利便性が劣る県南部エリアは、下落率が緩まってはいるものの相対的に高い下落率を示している。上昇69地点(昨年20地点)、横這い33地点(昨年39地点)、下落191地点(昨年259地点)で、上昇地点が大幅に増加しているが、近年の傾向である地価の二極化・選別化が続いている。
 地価下落が縮小した要因として、政府による住宅取得支援策、消費増税前の駆け込み需要、アベノミクスによる円安株高の進行・経済再生等が挙げられる。特に多くの株式を保有する富裕層の不動産取得が活発化した。なお、平成26年4月の消費増税が決まり、駆け込み需要取り込みを狙った建売業者、マンションデベロッパー等の土地取得が活発化したが、開発適地の減少、増税時期とのからみもあって徐々に沈静化しつつある。

(ロ)県庁所在地の地価動向と要因
 奈良市の平均変動率は、△0.3%から0.7%と上昇に転じた。近鉄奈良線・京都線沿線の駅徒歩圏で住環境も良好な住宅地を中心に、31地点が上昇(昨年10地点)、11地点が横這い(昨年22地点)。
 学園前、大和西大寺、近鉄奈良、高の原駅徒歩圏は、取引が例年より活発で0~4%程度の上昇。但し、人気のある近鉄奈良線・京都線沿線であってもバス圏等利便性の劣る地点は0~△1%程度の下落。
 市南部のJR線・近鉄橿原線沿線は、利便性・街路条件・区画整然性等が劣り、需要やや低調で0~△1.5%程度の下落。

(ハ)県庁所在地以外の地価動向と要因
 生駒市の平均変動率は、市人口増加(2.6%/5年)を背景に0.7%と上昇に転じた(昨年△0.2%)。16地点が上昇(昨年5地点)、9地点が横這い(昨年8地点)。大阪都心部への利便性良好な近鉄奈良線・けいはんな線沿線を中心に0~3%程度の上昇。一方、利便性・街路条件の劣る近鉄生駒線沿線の住宅地は、0~△2%程度の下落。
 近鉄大阪線沿線で人口増加率県1位(5.1%/5年)の香芝市、真美ヶ丘NT、近鉄五位堂駅勢圏住宅地を中心に8地点(昨年2地点)が上昇、平均変動率も0.1%(昨年△0.9%)と上昇に転じた。中和地区の中核都市である橿原市にあっては、大和八木駅勢圏住宅地を中心に下落率縮小(△0.8%→△0.3%)、上昇地点も5地点に増加(昨年2地点)。
 下落率の大きい市町村は、三郷町△2.2%、五條市△2.1%、平群町△1.9%、大淀町・高取町△1.8%。人口減少、利便性劣位、地場産業衰退・過疎化等が顕著な県南部エリア、宅地供給過多等により需要バランスが悪化している近鉄生駒線沿線町村が上位を占める。

(ニ)その他特徴的な変動率を示した地域と要因
 生駒-5は東生駒駅前で平成27年6月開院予定の市民病院建設が進捗中。富裕層の土地取得意欲活発化の他、病院客目当ての店舗、利便施設等進出による利便性向上、医療環境の向上期待もあって地価は上昇(3.2%)。
 三郷町勢野北地区(イーストヒルズ勢野)の売れ残り保留地を町が購入(約160区画)、その後、町民を中心に安値で売却。勢野西地区等隣接・近接の住宅地への需要低下から、奈良三郷-1(勢野西5)の下落率拡大(△1.5%→△3.3%)、県内住宅地下落率1位となった。

ロ.奈良県の商業地
(イ)県全体の地価動向と要因
   平均変動率は△0.5%であり、6年連続の下落(H21△1.9%、→H22△4.6%、→H23△3.4%、→H24△2.5%、→H25△1.6%、→H26△0.5%)となったが、昨年より下落率は縮小。奈良市、生駒市、香芝市、広陵町が上昇、これ以外の市町村は下落となったが下落率は縮小。回復著しい県北部エリアに比して、南部エリアは駅前商店街、路線商業地とも相対的に下落率が大きく地域格差が拡大。上昇は16地点(昨年0地点)、横這い8地点(昨年13地点)、下落39地点(昨年52地点)で、上昇が大幅に増加。住宅地と同様に地価の二極化・選別化が続いている。

(ロ)県庁所在地の地価動向と要因
 奈良市の平均変動率は、△0.5%から0.9%に上昇に転じ、9地点が上昇(昨年0地点)。一般景気の回復傾向、円安による外国人観光客の増加、海外旅行の割高感による国内旅行へのシフト、尖閣国有化以降の中国人観光客回復等の要因が挙げられる。なお、8月の第15回なら燈火会の入り込み客数は前年比約6.5%増、11月に閉幕した正倉院展も同期間比較で過去3番目の入場者数になった他、奈良駅前テナントビル上層階の空室が減少した。

(ハ)県庁所在地以外の地価動向と要因
 生駒市は、生駒駅北側再開発(第2工区)が進捗中。マンション2棟、商業ビルが建設中でH26年4月グランドオープン予定であり、周辺地価は強含みで推移。生駒5-1が存する駅南側エリアは、数年前に生駒市民病院の移転もあり、北側エリアとの相対的地位は低下傾向にあったが、景気回復により地価はほぼ底を打った状況。なお、生駒駅周辺の空室率がやや高い様に思われるが、好立地での長期間の空事務所は、賃料引き下げが行われていない場合が多い。
 橿原市は、大和八木駅前の好立地物件について0~1%程度の上昇。路線商業地はH25年春に前面開通した中和幹線、大型商業施設に店舗需要がシフトしつつある。平均変動率は△0.2%となり下落率縮小(昨年△0.9%)。
 県中南部地域は、香芝市、広陵町以外は、△1.5%~△3.0%程度の下落。県内下落率上位市町村は大淀町、五條市、御所市、上牧町等の県南部市町村が多く占め、県北部地域より下落率が大きい。特に駅前商店街は閉鎖、空店舗が多く、下落率は若干緩まったが、状況は以前と同じ。人口減少、地場産業衰退、周辺大規模SCへの顧客流出等の要因が考えられる。

(ニ)その他特徴的な変動率を示した地域と要因
 奈良5-14は、同一街路沿いに店舗等が増加しつつある発展見込まれる路線商業地であり、県内最高上昇率地点(6.2%)。西方で大規模分譲地(登美ヶ丘住宅地)の販売が進み、背後地人口・最寄駅乗降客数も増加。暫くは地価上昇が続くと思われる。
 香芝市商業地は、市の人口増加(5.1%/5年、県1位)を背景に、近鉄五位堂駅北側エリアの熟成度が高まってきたこと等により、県内最高上昇率(1.3%)となった。
 大型商業施設跡地に大手スーパーが出店したが顧客誘因力がやや低下。大和高田5-1の存する商店街は、通行量の大幅な回復は見られず、下落率は緩まったものの依然下落傾向が続いている(△4.2%→△2.2%)。
 生駒5-2は、東生駒駅前に市民病院建設が進捗中、平成27年6月に開院予定。薬屋、花屋等の関連業種からの問い合わせが増えており、変動率は上昇に転じた。(△0.4%→0.8%)

ハ.奈良県の工業地
(イ)県全体の地価動向と要因 
 平均変動率は△0.8%であり、引き続き下落となったが、昨年より下落率が縮小(昨年△1.8%)。円安により輸出関連企業業績が大幅に改善したが、一方、エネルギー価格上昇、電気料金引き上げ等に苦しむ中小企業・工場も多い。全体的には円安メリットが拡がりつつあり、企業マインドも好転しつつある状況。

(ロ)県内工業団地の地価動向と要因
 北田原工業団地内の生駒9-1は0.0%で横這いに転じた(昨年△1.5%)。国道163号へのアクセス道路工事が進捗中で、完成後は街路条件向上による需要増が期待される。
 県内工業出荷の3割強を占める昭和工業団地内の大和郡山9-1は0.0%で横這いに転じた(昨年△1.6%)。内陸部の希少性の高い工業団地であり、西名阪自動車道にH24.7月に開通した「大和まほろばスマートI.C(名古屋方面出入口)」により利便性が向上し、大阪方面出入口もH26に開通予定であり、更なる利便性向上が期待される。
 業績悪化が懸念される家電メーカー2社は、9月期中間決算で業績が大幅に改善したが、主に円安、リストラによるもので、今後の状況は不透明である。奈良県にも下請け、取引先が多く存在し、2社の動向は県内経済にとって不安的要因であり、周辺に存在する公示地価格も影響を受ける可能性がある。なお、主にこれら工場従業員を顧客としてきた店舗、宿泊施設等で倒産も発生している。
 西九条工業団地内の大手ハウスメーカー2社の工場は、震災後の復旧・復興需要、消費増税前の駆け込み需要等により盛況であり、奈良9-1は0.0%で横這いに転じた(昨年△1.3%)。
 五條市今井地区の既存工業地五條9-1は△2.2%で下落率が縮小した(昨年△3.2%)。地価水準が低く(坪約6万弱)、ほぼ底値に近づきつつある状況。

(ハ)県内工場立地状況
 H24年通期の工場立地件数は23件で前年比2件増(9.5%増)(全国は42.7%増)。立地件数は全国20位で近畿7府県(福井含む)中3位。なお、1社当たりの平均敷地面積は17千㎡で全国24位。

(ニ)その他特徴的な事項
 昭和工業団地内でここ2年ほど未利用であった工場跡地約20,000㎡に運輸関連企業が進出した。但し、県内には本格的は物流倉庫は少なく、運輸会社の配送センターが各地に見られる程度である。

ニ.地域制策、取組について
(イ)地域活性化の施策等
・記紀万葉プロジェクト
古事記完成1300年にあたる平成24年(2012年)から日本書記完成1300年にあたる平成32年(2020年)までの9年間をつなぎ、記紀・万葉集についての価値意識の醸成、「記紀・万葉集で楽しむ県」というブランドイメージの創出、ひいては来県者増加につなげる長期スパンの事業がスタートした。
・紀伊半島大水害で被害を受けた南部地域の早期復興のため、宿泊は伴う観光客の誘客を図る「奈良県南部地域復興プレミアム宿泊旅行券」(1枚8,000円、額面10,000円)を、平成23年度、平成24年度に続き、五條市・吉野町・天川村・十津川村・下北山村・川上村の6市町村において平成25年度も販売。
・平成25年9月13日に、国の総合特別区域の第4次指定において、奈良公園が、地域活性化総合特区に指定された。

(ロ)公共機能、主な公共交通機関等の導入やその予定。
・京奈和自動車道橿原高田I.C~御所I.CがH24.3供用開始、御所I.C~御所南I.CはH26年度供用開始予定。
・平成24年3月に中和幹線の香芝市一部区間が供用開始され、事業開始から32年を経て、香芝市田尻から桜井市脇本までの前線約22.2kmが繋がった。
・平成24年7月、西名阪自動車道「大和まほろばスマートインターチェンジ(名古屋方面出入口)」が開通。平日1日の平均利用台数が目標の600台を上回る760台程度となり、利便性が向上している。なお、大阪方面は平成26年に開通予定。

(ハ)区画整理事業等
・奈良市:JR奈良駅南特定土地区画整理事業、西大寺南土地区画整理事業、登美ヶ丘11次2期住宅地は進行中。
・奈良市:あやめ池遊園地跡地開発は平成22年10月街開き。
・生駒市:生駒駅前北口再開発事業、第1・4地区完成。現在は第2地区進行中で商業ビルは平成26年4月グランドオープン予定。
・生駒市:高山第2工区開発について、平成22年10月県が開発検討中止を発表。その後、生駒市はリニア中央幹線「中間駅」誘致要望書を県に提出。
・香芝市:近鉄五位堂駅周辺の土地区画整理事業は五位堂駅前北地区が完了し、現在、  第2地区が進捗中である。なお、平成18年から進められてきた近鉄下田駅北側駅前  広場が平成23年10月に完成し利便性が向上した。

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